国の教育ローンは審査甘いのか?審査落ちで借りれない場合の対処法

学費は期限までにお金を準備しなくてはいけません。「国立に進学してほしかったが、私立しか通らなかった」というケースも想定できます。そんな場合、やはり頼りになるのは教育ローンや学費ローンなどでしょう。
教育ローンは、大きくわけて
- 国の教育ローン(日本政策金融公庫の教育一般貸付)
- 民間の教育ローン(銀行・信販会社など)
の2種類となります。
通常、金利が低い国の教育ローンに申し込み、審査結果などに応じて民間の教育ローンを検討するという流れで利用計画を立てる方が多いでしょうか。
国の教育ローンと聞くと「審査が厳しいのでは?」「あまり大きな額は借りられなさそう」と心配になりますね。実際のところは、どうなのでしょうか。
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国の教育ローンの審査は甘い?
国の教育ローンの審査について調べてみると「甘い」という情報が見つかる反面、「厳しくて借りられなかった」というものも多数あります。審査の基準は公表されていないので、申し込み条件やローンスペックなどを民間の教育ローンと比較してみましょう。
教育ローン | 国の教育ローン(教育一般貸付) | みずほ銀行教育ローン | 三井住友銀行教育ローン(無担保型) | 三菱UFJ銀行ネットDE教育ローン | 住信SBIネット銀行MR.教育ローン | セディナ学費ローン | オリコ教育プラン |
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収入条件 | 年収(所得)の上限額が 子どもの人数に応じて決まっている。 子ども1人790万円(590万円)~ 子ども5人1,190万円(970万円) ※緩和条件あり |
前年度税込年収 200万円以上 |
前年度税込年収 200万円以上 |
前年度税込年収200万円以上 | 指定なし | 指定なし | 指定なし |
年齢条件 | 指定なし | 20歳以上66歳未満 (最終返済時年齢71歳未満) |
20歳以上 65歳以下 |
20歳以上完済時 70歳の誕生日まで |
20歳以上完済時70歳未満 | 20歳以上完済時65歳以下 | 20歳以上 |
勤続年数 | 指定なし | 2年以上 | 指定なし | 1年以上 | 指定なし | 1年以上 | 指定なし |
保証人 | ○進学・在学する方の4親等以内の親族 ○教育資金融資保証基金による保証を 利用するなら不要(別途保証料が必要) |
不要 (ただし保証会社の保証が必要) |
不要 (ただし保証会社の保証が必要) |
不要 (ただし保証会社の保証が必要) |
不要 (ただし保証会社の保証が必要) |
原則不要 (学生本人申し込みの場合は 保護者の連帯保証が必要) |
申込内容により必要 |
限度額 | 子ども一人あたり最高450万円まで | 10万円以上 300万円以内 |
10万円以上 300万円以内 |
30万円以上500万円以内 医歯薬系、研究科などは 最高1,000万円以内 |
10万円以上1,000万円以下 | 5万円以上300万円以下 | 10万円以上500万円以下 |
金利 | 1.66%(固定金利) | 3,475% (ネット申込2.975%) (変動金利) |
3.475%(変動金利) | 3.975%(変動金利) | 1.775%~3.975%(変動金利) | 8.0%~12.0% | 4.80% |
返済期間 | 最長15年 | 最長10年 | 10年以内 | 10年以内 | 最長15年 | 最長5年 | 最長7年 |
提出書類 | 借入申込書 住民票の写し 運転免許所 源泉徴収票または確定申告書(控) 預金通帳 合格通知書など(入学資金) 在学証明書など(在学資金) 使いみちを確認できる書類(在学資金) |
本人確認書類 年収確認書類 資金使途を証明するもの (学費納入書など) |
本人確認書類 年収確認書類 資金使途確認書類 住民票(子どものために借りる場合) 在学証明書(学生本人が借りる場合) |
本人確認書類 資金使途証明書類(納付書等) 収入確認書類(借入額が201万円以上の場合) |
本人確認書類 収入証明書類 資金使途証明書類 申込者と就学者の続柄の分かる書類 |
ローン申込書 本人確認書類 申込者と子どもの関係を証明する書類 資金使途証明書類 合格通知書(入学費用) 在学証明書(在学費用) |
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融資までの目安 | 20日で振込 | 融資までの期間はサイトに明記なし。 審査後、来店または郵送で契約 |
最短即日審査。その後契約 | 審査回答は最短即日。申込から最短8日 | 2週間程度 | 記載なし | 審査、契約後最短2営業日 |
用途 | 入学金、授業料、在入学のための 住居費用、教科書・参考書代など 3ヶ月以上の海外留学にも対応 |
教育関連資金全般 他金融機関等の教育ローンの借換 |
学校・塾・予備校等に納付する 教育関連資金および借換 |
幼稚園~大学院授業料 塾や専門学校の入学料や授業料 授業料以外の費用は要相談 |
入学金、授業料、海外留学費 教科書代、制服代、引越し代 他社からの借換 |
入学金、授業料、教材費など 学校へ納付する学納金 |
教育関連資金全般 |
元金返済据え置き | 可 | 可 | 不可 | 可 | 可 | 可 | 不可 |
※金利はいずれも2020年2月18日現在
国の教育ローンは金利が低いだけでなく、限度額も450万円と私立医歯系でもほぼ賄えるほどの高さです。教科書代や留学費用など幅広い使用目的にも対応しているため、様々な方に使いやすいローンといえるでしょう。
申し込みでの収入や年齢条件などを見ると、民間ローンでは200万円以上の税込年収が条件となっているものが多いです。国の教育ローンでは申し込みできる最低額ではなく、上限額が決まっています。規定の額より所得が高すぎる方は申し込めません。
つまり、低所得の方ほど申し込みしやすい設定になっているわけですね。さらに、世帯年収200万円以下の場合には、優遇制度を受けられます。
また、保証人を付けるか、保証基金による保証を利用するか選べる、年齢条件や勤続年数での指定は特にない、といったように民間の教育ローンに比較しても、申し込みやすいと感じる設定です。
国の教育ローンの申込基準は甘いといってよいでしょう。ただし、気になるのは審査基準ですね。これさえすれば絶対にローン審査に通るというものはありません。ただし「通らない」と明確にわかっている理由があります。
国の教育ローンの審査に落ちる理由は?
事故情報がある
国の教育ローンは、日本政策金融公庫が取り扱っています。日本政策金融公庫は、全国銀行個人信用情報センターと株式会社シー・アイ・シーの2つの信用情報機関に加盟しています。
この信用情報機関に、金融事故情報が記録されていると、ローン審査には通りません。金融事故には
- 3か月以上の返済の遅延
- 代位弁済
- 強制解約
- 債務整理
などがあります。記録は5年(さらに長期になる場合もあり)保有されるので、この間はどんな審査に申し込んでも借りられないのです。
収入が安定していない
ローンは毎月確実に返済する必要があります。ローンの審査では、収入が安定しているか、という点を重視しています。月によって収入が上下する、という方の安定性は低いと考えられ、審査に通らないこともあります。
国の教育ローンでは、必ずしも正社員で働いている必要はないのです。また、勤続年数にも特に基準はありません。ですが、長期で勤務している、今後も収入が継続する、といった点はチェックされると思っておきましょう。
返済負担割合が大きい
どんなローンでも、収入に応じた額を借りる必要があります。毎月返済する額が大きくなってしまうと、返済できなくなってしまうでしょう。そのため返済負担割合を計算し、重荷となっていないかを審査で確かめます。
「返済負担率=1年間の返済額÷年収×100%」で算出できます。
別のローンをすでに利用している場合は、その返済額と教育ローンを借りられた場合の返済額の合計で計算します。返済負担率は、明確に○%なら借りられるとは断言できません。
様々なローンでは収入の3分の1の額を返済負担率のリミットと見ています。ローンを取り扱う金融機関によって、基準は異なると考えられます。あくまで目安ですが25%、多くても30%程度に返済負担率がとどまるなら、審査に通る確率が高くなるでしょう。
審査に通らなかった場合は、収入に比較して借入額が大きすぎる、すでにローンを抱えていて返済額が大きくなりすぎるといった理由が考えられます。
公共料金などの滞納
公共料金や、家賃などの滞納がある場合には、審査に通らないと言われています。
公共料金といっても保証会社との保証契約がないもの、つまり水道代、ガス代などの滞納の場合には信用情報機関に記録されないので、ローン審査には影響が出ません。
ただし、スマホや携帯などの端末代金を分割で支払っている場合には、延滞すると記録が残ります。
また、住居の賃貸契約の際に、保証会社が信用情報機関に加盟していると、延滞すれば記録されてしまうでしょう。
家主との賃貸契約とは別に、保証会社とも家賃保証契約を結んでいます。そのため、保証会社によっては家賃の滞納もローン審査に影響が出てしまいます。
審査落ちで借りられない場合の対処方法
審査落ちで国の教育ローンを借りられないとき、どんな対処法でお金を準備するとよいのでしょうか。
民間教育ローン
国の教育ローンのほうが、民間の金融機関の教育ローンよりも申し込み条件は甘いのですが、確実に審査に通るかどうかわかりません。
学費は必ず納入するリミットがあるものです。そのため、審査落ちにそなえて「民間教育ローン」も申し込んでおいたほうがよいでしょう。
奨学金、教育支援資金も検討したい
国の教育ローンの審査落ちや、必要額が借りられない場合を想定し、日本学生支援機構の奨学金制度の利用も検討しましょう。奨学金制度も返済しなくてもよいものが登場してきていますが、主流はこれまでと同様に返済義務があるものです。
奨学金の返済は長期に渡り、返済の難しさを感じている方も少なくありません。利用前には、返済期間や返済額をしっかり検討しておく必要があるでしょう。
また、教育支援資金も利用できる方もいます。教育支援資金は、低所得者が対象となっています。入学金50万円、授業料月6,5万円(大学の場合)といった制限があります。教育支援資金のみで学費をすべて支払ってしまうことは難しいので、補助として活用する予定にしておきましょう。
初年度納付金はいくらかかるのか?
我が子が希望の学校に入学が決まった、これほどうれしいことはありません。しかし心配になるのはその学費。入学金以外にも学校に納めなければならないお金があります。
本来であれば勉学に専念させなければならない我が子、しかし学費の不安はつきることはありません。
大学 | 初年度納付金 | 参照元 |
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国立大学 | 81万7,800円 | 国立大学等の授業料その他費用に関する省令(国立大学の標準額) |
公立大学(地域外) | 93万2,519円 | 文部科学省H29年度学生納付金調査結果 |
公立大学(地域内) | 76万8,480円 | 文部科学省H29年度学生納付金調査結果 |
私立大学(文系) | 115万863円 | 文部科学省H28年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額) |
私立大学(理系) | 151万8,333円 | 文部科学省H28年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額) |
私立大学(医歯系) | 479万2,928円 | 文部科学省H28年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額) |
専修学校 | 126万円 | 東京都専修学校各種学校協会R元年度学生・生徒納付金調査結果 |
※大学・学科などによって、実験実習料、教材費、在籍基本料など更に諸費用が必要
初年度は入学金と授業料の合計です。たとえば、国立大学なら入学金28万2,000円と授業料53万5,800円の合計額となっています。
納付金は、卒業まで毎年支払っていくのです。(入学金は初年度のみとなります)とにかく納付金は、入学前に一度で払ってしまうものではありません。株式会社日本政策金融公庫の調査によると、高校入学から大学卒業までに必要な教育費は約953.4万円です。参照:平成30年度教育負担の実態調査結果
学費の最も不安な要素は「長期的な大きい支出」になるでしょう。