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生活保護の不正受給は犯罪!行政側の対策と罰則例を紹介

 2020/10/22 お金に関する豆知識   962 Views

生活保護は、国が定めた「最低生活費」に満たない収入しか得られない人を保護するための制度です。

本当に困った人を救うためのセーフティーネットになるはずの制度ですが、残念ながら真っ当に利用している人ばかりではありません。
中には不正受給をしている人もいます。

今回は、生活保護と不正受給の関係について解説します。

生活保護の不正受給とは

世帯に収入があった時や世帯員の増減があった時など、生活に変化があった時は速やかに福祉事務所に連絡しなければいけないのが生活保護の決まりです。

事実と違う申請を行ったり、不正な手段を使ったりするなど、決まりを無視して生活保護費を受け取ることを「不正受給」と呼びます。

生活保護のルールである生活保護法では、第78条で不正受給について以下のように定めています。

不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に百分の四十を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。

引用元:e-Gov|生活保護法第七十八条

つまり、生活保護を不正に受給していたことが明らかになった場合は、都道府県知事や市町村長がその費用の一部、または全額を徴収することができるというものです。

不正受給の例

ひとくちに不正受給といっても、さまざまなケースがあります。不正受給に該当する主なケースを以下に紹介します。

  • 労働で得た収入や年金収入や仕送りなど何らかの収入があるのにもかかわらず申告していない、または虚偽の申告をしている
  • 住宅・土地・自動車などの資産を保有しているのに申告していない
  • 届けて出ている世帯員以外の人と住んでいる
  • 偽装離婚をしていたり世帯員以外の者と同居したりしている
  • 暴力団員(反社会的勢力)であることを隠している
働くことでお金を得ること自体は、もちろん不正受給ではありません。
生活保護は最低生活費(1ヶ月間生活するための最低限の生活費)に満たない場合に「不足分を補う」ことが原則ですから、手に入れた収入を適正に申告している限りは不正受給には当たらないのです。

また住宅や自動車などは条件を満たす場合は所有が認められることがあります。
「生活保護を受けると手放さないといけないのか・・・」と早合点して事実を隠してしまうことのほうが問題になるのです。

資産を手放さなくても良い例

どのような場合に、住宅や自動車を手放さなくていいのでしょうか。

まず、今の住宅に住み続けるための要件です。
生活保護費で借金を返すことは認められていないため、住宅ローンの残債がある住宅を所有し続けることはできません。

一方で残債がなくなった住宅であれば、そのまま住み続けることは可能です。
ただし、住宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」の活用を求められる場合があります。

自動車についても、基本的には資産として売却の対象です。

しかし、収入を得るための通勤に「車がないと移動に時間がかかりすぎる」ような場合であれば、許可される可能性があります。

都市部はまだしも地方の場合は車がないと生活が成り立たないことも考えられるため、自動車を持っている場合は正直に申告してケースワーカーに相談しましょう。

匿名で不正受給を通報したらどうなる?

保護受給者と関係が近い近隣住民や友人が「彼(彼女)は生活保護を受けている」と気が付いてしまう可能性はあります。

また、場合によっては「不正受給をしているのでは?」と疑ってしまうケースもあるかもしれません。

その場合、匿名で通報するのは妨げられていません。
市町村の福祉事務所に匿名で通報した場合、どうなるのでしょうか?

まず、匿名の通報でも匿名でない通報でも、市役所はその人が生活保護を受けているかどうかを答えることはありません。

しかし、話を担当者に伝えることは可能ですから、通報すること自体は問題ありません。

しかし、仮に通報にもとづく調査が行われたとしても、結果が通報者に伝わることはありません。
生活保護を受けているかどうかは個人情報にあたるためです。

結果まで知りたいという想いで通報しても、意味はありません。

通報があった場合の調査

通報があれば内容に基づいて調査が行われますが、調査の方法は通報の内容によって異なります。

「健康で困っていないはずなのに生活保護を受けている」という通報であれば、ずばり本人に確認を取ることになるでしょう。

「こんな通報があったが、実際はどうなのか」といった具合です。
その場で不正受給を自白すれば調査はおしまいになり、不正受給した分の返還を求めるプロセスに進みます。

しかし、事実を認めないこともあるかもしれません。

本人聞いて事実確認が取れない場合、次に所属する会社に調査を行います。
会社は従業員の収入については隠さないため、申告と異なる収入を得ているかがすぐに明らかになります。

収入と申告に差異があれば、不正受給として処罰の対象になり得ます。

不正受給の件数|さいたま市のケース

生活保護制度は生活に困窮している人を保障であり、自立を促すための制度です。
適正な活用の妨げになる「不正受給」には自治体としても目を光らせています。

しかし、地域にもよるが不正受給の件数は減らず、横這いなのが現状です。

例えば「さいたま市」不正受給の件数の推移は以下の通りになります。

年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度
件数 447 462 462 536 472 404 406

若干の減少傾向が見られるものの、直近7年間では年間で400件を下回ることはありません。

不正受給の実態が明らかになると本当に生活に困って生活保護を受給している人にも、世間の厳しい目が向けられることになります。

不正受給に該当したらどうなる?

その不正受給が意図的に行われたものであったり、市からの要請に従わずに返還に応じなかったりしたものである場合、悪質と判断されると最悪の場合は市から告訴され、裁判に発展することになります。

生活保護法第85条にある通り、以下のような罰則規定が適用されます。

不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。

引用元:e-Gov|生活保護法第八十五条

不正の程度にもよりますが、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されることになります。
ただし、刑法の罰則が科される場合はそちらが優先されるのが原則です。

また警報や生活保護法による罰則が規定されたとしても、不正受給した費用の返還義務は免除されない点は知っておきましょう。

刑事罰と生活保護費の返還の両方が迫られ、今後の生活はますます困窮することになるでしょう。

不正受給の防止と早期発見の対策

不正受給は1つの市で年間400件以上が発生していることもあり、不正受給の防止は国全体の課題です。

国として全国一律で不正撲滅に努めているほか、市町村単位で独自の対策を行っている場合もあります。

ここでは「全国共通の対策」と「市町村独自の対策」について解説します。

全国共通の対策

全国で共通した不正受給対策の方法は、以下の通りです。

  • 届け出の義務の説明
  • 家庭訪問による調査
  • 課税調査

届け出の義務の説明

福祉事務所では、保護開始時及び継続して保護を受給する人に対して年1回以上、書面か口頭で生活上の変化を届け出る義務があることについての説明をしています。

家庭訪問による調査

福祉事務所の担当者(ケースワーカー)生活保護受給者の自宅を定期的に訪問し、就労状況・求職状況を確認することで保護を受けている人の生活の変化を調査しています。

課税調査

給与・賞与を支払った事業者は、支払った金額を従業員が居住する市町村の課税担当課に報告しています。

福祉事務所では、報告のあった金額と福祉事務所に申告した金額に差がないかを確認することが可能です。
差異が生じた場合は調査を行うことで、未申告収入の確認を行います。

働いている先から得られる収入を過少に申告しても、必ずバレてしまうということです。

自治体の独自対策

自治体によっては、国が定めた対策以上の独自対策を行っている場合もあります。
先程紹介した「さいたま市」の事例を紹介します。

生活保護適正実施推進員の設置

さいたま市では、「生活保護適正実施推進員」として警察OBを生活福祉課・福祉事務所に配置しています。

福祉事務所の要請を受けた場合は元警察官としての見地から不正受給事案に対する調査や、悪質な場合は告訴手続きの検討を進めることができます。

生活保護不正受給は犯罪|逮捕の事例

生活保護の不正受給は単なるマナー違反ではなく、立派な犯罪行為です。
実際に逮捕・起訴された「高槻市」「京都市」の事例を紹介します。

高槻市の事例

高槻市では、平成30年に生活保護を不正受給していた元被保護者が、詐欺罪で逮捕されています。

平成27年に交通事故に遭って損害保険会社から休業損害金及び慰謝料を受け取っていたにもかかわらず、福祉事務所に届け出ることなく不正に約68万円の生活保護費を受給したという内容でした。

受給歴平成20年1月4日から平成30年の1月17日までの10年間にも及んでいます。

保険金や慰謝料を受け取った事実を報告すれば、逮捕されることはなかったはずです。

京都市の事例

京都市でも、同様に不正受給で逮捕者が出ています。

自身が管理する他人名義の金融機関口座から出金することで収入を得ていたにもかかわらず、福祉事務所に申告せずに生活保護費を42回に渡って受け取っていたという事例です。

被害総額は500万円を超えており、詐欺罪の容疑で逮捕されています。

2つの事例を見てみると、両方とも保護を受ける際に「収入の正確な申告をしていなかった」ことが共通しています。

生活保護は最低生活費に届かない収入しかない「本当に困った人」を助ける制度ですから、不正受給は厳正に処罰されることになります。

自分にそのつもりはなくても、結果的に申告せずにいると生活保護の廃止などの処分が下されることもあるのです。

収入は正確に、速やかに申告することがもっとも重要になります。

不正受給にならないためにできること

不正受給にあたらないための対策は1つです。
すべての世帯員の収入や資産、世帯員の構成、生活状況などに変化があった際は速やかに正確に届け出ること。これに尽きます。

以下のような状況が発生した場合、必ず報告して被保護者としての義務を果たしましょう。

  • 世帯員が就職して働き始めた
  • 世帯員が転職して雇用形態が変わった(正社員→非正規、非正規→正社員)
  • 世帯員が死亡した
  • 相続や贈与で新たに財産を得た

働いて得た収入は全て申告

生活保護中は、未成年者を含めた全ての収入について申告する義務があります。

働いて得た収入を申告することで、必要経費や基礎控除などの控除を受けることが可能です。

未成年者なら基礎控除に未成年者控除が加わるため、正しく申告することで、かかった費用分は差し引かれることがなくなります。

これを申告しないことで不正受給になり、基礎控除などのメリットを受けることができなくなるのです。

生活保護で借金をしない

生活保護を受給している最中の借金は認められていません。

借金をした場合は原則として「収入」にカウントされるため、保護費が減額されます。
最悪の場合は保護の停止・廃止につながることもあるのです。

借金は個人間の貸し借りや銀行からの融資だけではなく、消費者金融が提供するカードローンやクレジットカードで現金を借りる「キャッシング」も該当します。
気軽に借りられるからと言って、安易に利用するのは禁物です。

ただし、クレジットカードに関しては相談すれば一部のみ使用が認められる可能性もあります。(携帯電話の料金をクレジットカード払いにするなど)

生活保護の不正受給は犯罪!まとめ

今回は、生活保護の不正受給とは何か、不正受給に該当すると何が起こるのかを解説しました。

生活保護を不正に受給していると判断された場合は生活保護の停止や廃止はもちろん、最悪の場合は詐欺の疑いで逮捕、起訴される可能性もあります。

軽い気持ちで収入申告をしなかったために、人生が大きく狂うことも考えられるのです。

生活保護の申請をする際は収入をごまかすことなく、正確に申告することを心がけましょう。保護費の受給後に収入を得た場合も同様です。

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ライター紹介

森本 陽子

森本 陽子

2級ファイナンシャル・プランニング技能士(個人資産相談業務)AFP認定者。自身の経験や知識を活かし、複雑なお金の仕組みや知識をわかりやすく解説しておりツイッターでの有益な呟きにも注目。FP森本陽子の詳細プロフィール

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