生活保護の受給者は結婚できる?ケースワーカーに要相談のケースとは
生活保護の受給者であっても、異性と恋愛している人はいます。
生活保護を受けていたとしても、自由に結婚することができるのでしょうか。
また、双方とも生活保護を受けているというパターンもあるでしょう。その時の生活保護はどうなるのでしょうか?
今回は、生活保護を受けている人が結婚したらどうなるのか、注意点と併せて解説します。
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生活保護を受けていても結婚できる
生活保護を受けている人であっても、もちろん結婚はできます。
生活保護の条件を満たしている場合であれば、結婚後も生活保護の受給を継続することが可能です。
ただし、生活保護の受取額などに変化が起こることは考えられます。結婚に伴って配偶者が収入を得ている場合、その分の生活保護費は減額になるためです。
場合によっては生活保護の受給対象から外されることも覚悟しなければいけません。
結婚に伴う引っ越し・転居費用は出ない
生活保護では「住宅扶助」で転居に伴う費用が支給されます。
ただし、その条件は「今よりも家賃が安い部屋に引越す」などの一定の条件を満たす場合に限られます。
結婚に伴う引越し費用については、原則として生活保護からサポートは受けられません。
ただし、(ケースワーカーの判断次第ですが)世帯変更に伴う生活保護費の過払い金の返還を免除してもらうなど、別の形で受け取れる可能性はあります。
あくまで担当者の判断次第のため、必ずサポートを受けられるわけではないことは覚えておきましょう。
生活保護受給者の結婚指輪の行方
生活保護を受ける要件の1つに「資産の活用」があります。
生活保護を受けようとする時は、資産となるものは手放して現金に換える必要があるという要件です。
使用していない土地や住宅などの不動産はもちろん、貴金属や貯蓄性のある保険も対象になります。
それでは「婚約指輪」「結婚指輪」はどうでしょうか?これも立派な貴金属ですから、普通に考えれば売却する必要があります。
ただし、所有する意味が「オシャレ」などではなく結婚の証明であることを考えると、結婚指輪や婚約指輪に関しては売却を求められないと考えることができます。
不安であれば、結婚を考える時点でケースワーカーに相談しましょう。
結婚前にケースワーカーに相談すべきケースもある
どちらかが障害年金を受けている場合
どちらかが障害年金を受けているような場合には、ケースワーカーに相談しておくべきです。
障害年金と生活保護の両方を受給できるときは、原則として障害年金の支給が優先です。
不足する分についてのみ、生活保護で補うことになります。
結婚後に障害年金の額によっては生活保護の受給額が変更になります。
そのため、不正受給に該当しないようにケースワーカーに相談が必要なのです。
なお、障害年金は結婚にあたって減額になることはありません。
焦点になるのは、あくまで生活保護の受給額だけです。
障がい者同士の場合
障がい者同士の結婚の場合、両方が障害年金を受給しているでしょう。
前述したとおり、それぞれの障害年金額は結婚後も変わることはありません。
ただし、双方が受け取る障害年金が一切減額されないのであれば、生活保護は減額になる可能性が高くなります。
このケースでも、片方が障害年金受けているパターンと同じくケースワーカーへの報告は必須です。
相手が外国人の場合
原則として「日本人の配偶者」の在留資格があれば、結婚相手の外国人も一緒に生活保護を受けられます。
しかし、過去に大阪市で生活保護の受給目的の集団入国があったこともあり、手続きや調査に時間がかかることがあるかもしれません。
いずれにしても、外国人との結婚が分かった時点は、速やかに担当のケースワーカーに相談しましょう。
結婚報告をしなかった場合
打ち切りされて過去にさかのぼって返還請求される場合も
すでに紹介している通り、結婚すると生活費がまとまって安くなります。
生活保護の金額も減額になる可能性が高くなります。
もし結婚した事実を隠したまま、それまでと同額の生活保護を受け続けたらどうなるのでしょうか?
ケースワーカーが定期的に家庭訪問を行えば、そこで結婚の事実はだいたい発覚します。干している洗濯物や複数の歯ブラシなどの生活の痕跡で見つかるためです。
もし上手く隠したとしても、定期的に行う戸籍の確認で間違いなく発覚します。
そもそも婚姻届けを市役所に届けるのに、同じ市役所で働くケースワーカーにバレないことは考えられないでしょう。
結婚をしている事実が発覚すると、生活保護が無くても生活できる状況であれば保護は打ち切りです。
最悪の場合は不正受給として、今まで受け取っていた保護費の返還を求められます。
結婚をしたからといって、すぐに生活が好転するとは限りません。
不正受給の烙印を押されないためにも、必ずケースワーカーに報告が必要です。
生活保護受給者が結婚する際の注意点
生活保護の受給者が結婚する場合、注意しておくべき点がいくつかあります。
ここでは、その注意点が何なのかを解説します。
生活保護受給者同士の結婚は支給額が減る場合がある
男性と女性の双方が生活保護の受給者、というパターンでは受給額はイチから見直しが行われます。
見直された結果、中には生活保護費が増える人がいるかもしれません。
生活保護そのものは継続される可能性がある一方で、金額は減額になる可能性が高いです。
なぜなら、生活保護は世帯単位だからです。
水道光熱費や家賃や食費など、これまでは2人が別々で必要だったものが結婚して同居することで1本化されます。生活費が減少する実態を考慮し、生活扶助が減らされる可能性は大いにあるでしょう。
ただし、2人で1つの場所に住むことで、かかるお金自体は減っています。
生活レベルが今までと比べて極端に下がるわけではありません。
生活保護受給者同士の結婚は同居を促される
両方が生活保護受給者であったとしても、結婚すること自体に問題はありません。ただし、どちらかの世帯にもう片方の世帯に転入するように促されます。
理由は、「社会通念上は同居することが望ましい」ということが1つ。
もう1つは、先ほど解説した通り「それぞれの世帯で支給するよりも生活保護費が少なくて済む」からです。
例えば、月々の生活保護費が15万円の2人が結婚した場合を考えてみましょう。
各世帯で15万円ずつ(合計30万円)の生活保護費が必要だったものが、2人が一緒になったことで家賃や水道光熱費が一本化され、生活費が安くなります。
生活費の減額を反映した生活保護の額が20万円になった場合、合計で10万円の生活保護費が浮くことになります。
このように生活保護費を削減できるため、結婚した場合は同居するように勧められるのです。
相手が生活保護でない場合は辞退届を提出
自分は生活保護を受けていて相手が受けていない場合や、その逆のパターンもあるかもしれません。
その場合は「生活保護を辞めるための辞退届」を提出することになります。
生活保護は世帯単位で行われます。
結婚したら片方だけに引き続き支給するということはありません。
結婚した相手が生活保護を受けずに最低生活費以上の収入を得ているのですから、扶養に入るなどの手段が可能であれば生活保護を受けることはできません。
一方で、もし結婚相手も最低生活費ぎりぎりの生活を送っていた場合、2人が一緒になることで生活が厳しくなることもあります。
この場合は生活保護を受けてなかった方が受給の申請を行う必要があります。
同棲していた場合でも受給は可能
同棲状態であっても、生活保護の受給は可能です。
ただし、同棲状態で生活保護を受ける場合、結婚と同じく「両名に資産がない」「収入もない」「親族からの支援が受けられない」などの条件を満たすことが必要です。
このように困っている状態であれば、生活保護を受けることができます。
とはいえ、生活保護はあくまで「自立を促す制度」です。
就労して安定的な収入を得れば生活保護はそこで終了するという原則は忘れないようにしたいものです。
同棲相手に収入があることを隠して受給した場合、生活保護を受け始めてから収入があるパートナーと同居を始めた場合は不正受給にあたります。
万が一離婚した場合の生活保護の行方
生活保護を受けている世帯が離婚した場合、母子家庭であれば「母子手当(児童扶養手当)」を受け取ることができます。
経済的に困窮する母子世帯を助けるために一定の給付金が支給される制度です。
また、元配偶者から「養育費」を受け取れることもあるでしょう。
原則として児童扶養手当や養育費は、生活保護に優先します。これらの金額の合計が最低生活費を上回る場合は、原則として生活保護を受けることはできません。
しかし、絶対にもらえないということはありません。最低生活費に満たない場合、その差額が支給されます。
養育費を受け取っている事実を隠して生活保護を受けることは不正受給に該当するため、それまでの生活保護費の返還を求められることになります。
生活保護世帯の妻が妊娠した場合の加算
生活保護の受給者が妊娠・出産をした場合、生活保護に加算されるお金があります。
ここでは、妊娠・出産した場合の加算について解説します。
- 妊婦加算
- 産婦加算
- 母子加算
- 児童養育加算
妊婦加算
母体の保護や栄養補給などの需要に対応するために支給される加算です。
文字どおり、生活保護の受給者が妊娠した場合に支給されるもので、加算額は妊娠6ヶ月を境に異なります。
級地という土地のランクでも支給額は異なるため、正確な給付額は住まいの自治体の級地を確認する必要があります。
【妊娠6ヶ月の場合】
- 1級地及び2級地=9,130円
- 3級地=7,760円
- 1級地および2級地=13,790円
- 3級地=11,720円
産婦加算
出産した日が属する月から支給される加算です。
最長で6ヶ月間に渡って支給されますが、ミルクで育てる場合より母乳で育てるほうが支給期間が長くなります。
妊婦加算のほうが金額が大きいため、出産の日が属する月は妊婦加算、翌月から産婦加算が支給されます。この場合は最長で5ヶ月の支給になるのが一般的です。
金額は1級地及び2級地で8,480円、3級地で7,210円です。
母子加算
片方の配偶者がいない家庭で滋養を養育しなければならないケースで支給される加算です。
母子と名付けられてはいますが、父子でも受給できます。
児童扶養手当と連動しているため、児童扶養手当の支給がある=母子加算が付く、支給されない=母子化加算はつかない、ということになります。
支給される金額は級地と養育する児童の数に応じて以下のとおりです。
【1級地】
- 児童1人の場合 20,300円
- 児童が2人の場合に加える額 3,900円
- 児童が3人以上1人増えるごとに加える額 2,300円
- 児童1人の場合 18,800円
- 児童が2人の場合に加える額 3,600円
- 児童が3人以上1人増えるごとに加える額 2,200円
- 児童1人の場合 17,500円
- 児童が2人の場合に加える額 3,300円
- 児童が3人以上1人増えるごとに加える額 2,000円
児童養育加算
世帯に児童がいる場合に支給される加算です。
児童手当と連動しているため、児童手当の支給がある=児童養育加算がつく、児童手当の支給がない=児童養育加算がつかない、となります。
ただし、あくまで別制度ですから、児童手当をもらいながら児童養育加算を受け取れる場合もあります。
具体的には以下のとおりです。
- (第一子・第二子)3歳に満たない児童=11,820円
- (第一子・第二子)3歳以上の児童=10,190円
- (第三子以降)小学校終了前の児童=11,820円
- (第三子以降)小学校修了後高等学校終了前の児童=10,190円
生活保護の受給者は結婚できる?ケースワーカーに要相談のケースとは まとめ
今回は、生活保護を受けている人が結婚したらどうなるのかを解説しました。原則として、生活保護を受けている人であっても結婚は自由です。
ただし、相手が最低生活費以上の収入を得ている場合は生活保護は打ち切りになる可能性もあります。また、両方とも生活保護を受けている場合は生活費の減少に伴って生活保護費が減らされる可能性があることを覚えておきましょう。