奨学金とは|融資してもらえる種類や団体を紹介
奨学金制度は、大学や短期大学などに進学する人たちがお金を借りることができる貸与制度です。
学費は公立か私立かによっても異なりますが、年間で100万円を超えることも珍しくありません。
家計でやりくりした預貯金だけで全てを賄うのは難しく、手助けがないと成り立たない家庭もあるでしょう。
そこで今回は、奨学金制度の全体像を解説します。
加えて、万が一返せなくなった場合など、将来に起こるかもしれない事態に備えた注意ポイントも解説します。
このページの概要
奨学金制度とは
奨学金制度とは、家庭の事情などによって経済的な余裕がなく、進学にお金の準備が困難な学生に向けた制度のことです。
制度の目的について、日本学生支援機構では以下のように紹介されています。
経済的理由で修学が困難な優れた学生に学資の貸与を行い、また、経済・社会情勢等を踏まえ、学生等が安心して学べるよう、「貸与」または「給付」する制度です。
勉強に対して意欲のある学生が諦めてしまわないように、国などが独自に制度を設けています。
国だけでなく、都道府県などの自治体や大学、企業、NPO法人などのさまざまな団体で、経済的な不安を解消したい希望者を募集しています。
中でも特に有名なのは、日本学生支援機構(JASSO)でしょう。
それぞれの団体の奨学金は併用できる場合があるため、1ヶ所からの融資だけでは経済的に進学が難しい場合は複数からの借り入れも可能です。
誰が借りられるのか
大学に進学するからといって、全員が借りられるわけではありません。貸与の対象は以下のとおりです。
奨学金は、経済的理由により修学に困難がある優れた学生に貸与されます。
引用元:日本学生支援機構|申込方法
「経済的な余裕がない」「学ぶ意欲がある優秀な学生」という条件を満たす場合に申し込むことができます。
なお、ここでいう学生の定義は大学だけを指すわけではありません。
- 大学院
- 大学
- 短期大学
- 専門学校
- 高等学校
新入生だけでなく在学生も借り入れが可能で、当初借り入れていた金額を在学途中に増額することもできます。
とはいえ、誰でも利用できるわけではありません。
経済的に余裕がないことを確認するための家計基準と、学力が優秀であることを確認する学力基準による審査選考を通過する必要があり、場合によっては申請しても認められない場合があります。
入学金に使えない場合がある
気を付けるべき点として、奨学金は入学金の支払いに間に合わない可能性があることを覚えておきましょう。
通常、大学などの合格発表の1~2週間以内に入学金の振込みが必要です。
一方で奨学金の振込みは入学年の5月以降になることが多く、入学金の支払期限までに間に合いません。
アテにしてしまうと、合格後に支払いができない可能性があるのです。
まとまったお金を入学前に用意できない場合は、日本政策金融公庫の教育ローンの利用も検討する必要があります。
学生ではなく保護者が借り手となり、学生の卒業後に返済します。
まとまったお金を入学前に手に入れられるため、入学金の用意に苦慮している家庭に適した制度です。
奨学金のタイプは2種類
受け取れる奨学金には、そのままもらえる(返済の義務がない)給付型と、卒業後に返済義務がある貸与型に分かれます。
貸与よりも給付の方が狭き門であることが一般的です。
日本学生支援機構(JASSO)では、貸与型のみを扱っていましたが、現在では給付型の取り扱いも始めています。
さらに貸与型は、無利子と有利子に分かれます。
返済するべき金額が安いほど人気が高く、審査を通過できる人数が絞られます。
難易度としては給付型→貸与型(無利子)→貸与型(有利子)の順だと思っておけば良いでしょう。
審査が難しくなるほど、より高い成績を求められます。家庭などの事情で経済的に通学が難しいことも求められるため、給付型は特に狭き門となっています。
奨学金には受給条件がある
奨学金の利用にあたっては、受給条件をしっかりと確認することも大切です。
たとえば学校独自に行う融資では、その学校に合格した受験生や在校生だけが対象というケースがほとんどです。
自治体が実施している奨学金の場合も、その地域に居住している学生自身に対してだけ支給するなどの一定の条件が付されていることがあります。
どの制度を利用するのも自由ではありますが、自身が申し込み条件に合致するかどうかは事前にしっかりと確認が必要です。
代表的な4つの奨学金
日本国内で奨学金を利用する場合は、主に以下の団体のいずれかから借り入れることになります。
- 日本学生支援機構
- 地方公共団体
- 民間育英団体
- 大学
日本学生支援機構(JASSO)
国から支給される予算と卒業生の返還金で運営されているのが日本学生支援機構(JASSO)です。
主には無利子の第一種と有利子の第二種の貸与型を取り扱っていますが、現在では給付型も取り扱っています。
貸与には審査があり、家計基準と学力基準の両方をクリアしなければ貸与・給付を受けることができません。
申込方法は高校3年生時に在学高校を通じて申し込む予約採用と、進学先が決まってから学校を通して申し込む在学採用に分かれます。
在学採用の場合、進学先が国公立か私立か、在学通学か自宅外通学かによっても家計基準は異なります。
地方公共団体の奨学金
都道府県や市区町村の教育委員会が、居住者に向けて提供している制度です。
大学や専門学生向けの無利子の貸与型を取り扱うケースが多くなっています。
ただし、全ての地方自治体が提供しているわけではありません。
まずは、居住している自治体に奨学金制度を扱っているかの確認が必要です。
申込方法に関しても「個別に自治体に申し込む」「進学した大学から申込む」など方法が異なるため、奨学金を検討する初期段階で確認しておきましょう。
民間育英団体の奨学金
民間企業がお金を出し合い、財団法人や育英会などの民間団体から募集する制度です。
JASSOと同じく給付型と貸与型に分かれており、採用基準や給付金額は団体によって異なります。
貸与・給付を受けるためには書類選考と面接が必要です。
大学独自の奨学金
取り扱う大学に在学していて、経済的に勉強を継続するのが難しい学生に貸与される奨学金です。
新入生は入学試験の成績をもとに、2年次以降は前年度までに取得した単位や成績をもとにしたうえで、家計基準などを考慮して選考が行われます。
奨学金の内容(JASSOの例)
国内の奨学金
日本学生支援機構(JASSO)の場合、貸与型と給付型に大別されます。
第一種、第二種はそれぞれ貸与型であり、借りたお金は将来的に返済しなければいけません。
返済する義務はあるものの、以下のようなメリットもあることを覚えておきましょう。
- 比較的採用されやすい
- 在学中の返済は不要
返済できなければ信用情報機関に延滞の事故情報が記録され、将来のローン利用の際の大きな制約になってしまいます。
第一種
後述する第二種と異なり、無利子で借り入れることができる奨学金です。
利子を付けずに元金分だけの返済になるため、受給希望者にとっては第二種よりも有利な条件で借り入れが可能です。
ただし、第一種よりも選考基準が厳しく、申し込んでも審査を通過できない可能性があります。
第二種
有利子で借り入れることができる奨学金で、在学中に借りた額(元金)に利息を加えて返済します。
借りた額よりも大きな額を返済する必要があることから、第一種よりも選考基準は比較的緩いといわれています。
多くの学生は貸与型の第二種(有利息)を選択することになるでしょう。
入学時特別増額
第一種(無利子)や第二種(有利子)は在学中の学費に対して使うことができます。
入学時特別増額は、入学した月の通常の奨学金の月額に一時金を加えて増額して貸与する形式(有利子)です。
日本政策金融公庫の国の教育ローンに申し込んでも利用できなかった世帯の学生を対象としています。
入学時特別増額を利用することで、入学時にかかる費用のカバーが可能です。進学先によりますが、一般的に大学の入学費用は高額になります。
日本政策金融公庫の令和元年度「教育費負担の実態調査結果」によれば、国公立・私立別にみた入学費用の平均は以下のとおりです。
- 私立短大=66.9万円
- 国公立大学=71.4万円
- 私立大学文系=86.6万円
- 私立大学理系=84.5万円
これに加えて1年目の学費を支払う必要があります。
入学時の負担を減らすためには、入学時特別増額は利用価値があるでしょう。
ただし、入学前の貸与にはならないという点に注意が必要です。
あくまで入学した月のお金に一時金として増額する制度であり、支給されるのは入学後になります。入学金の支払いは入学前が原則であり、この制度をアテにして入学金を支払うことはできません。
給付型の制度もある
貸与型と異なり、受け取った奨学金の返済が不要になる制度が給付型です。
借入ではなく給付のため、学生が卒業した後に返済不要という経済的なメリットがあります。
ただし、貸与型以上に適用される学生は少なくなるのがネックです。
受給資格は貸与型よりも厳しく、審査の結果採用される人数も貸与型よりも少なくなります。
ただし、2020年4月からは国の施策として制度が拡充しており、受給対象者の枠が広がっています。
「自分の成績では通過できないかも…」と悩んでいる人も、チャレンジしてみる価値があるでしょう。
海外留学のための奨学金
日本学生支援機構(JASSO)では海外留学を希望する方を対象に、経済的支援として貸与を行っています。
バリエーションは以下のとおりです。
- 第二種(海外)
- 第二種(短期留学)
- 第一種(海外協定派遣対象)
- 第一種(海外大学院学位取得型対象)
自分の成績で内容が左右される!
学生自身が借りるお金である奨学金は、世帯収入だけでなく学生自身の成績が優秀であることも必要です。
奨学金は進学後の経済的な負担を減らし、安心して勉学に取り組めるようにすることが目的です。
継続して借りるには1年ごとに継続願を提出し、大学や専門学校の在学中に成績不振になったり留年が決まったりした場合、奨学金の支給の停止、最悪の場合は廃止になってしまうことも考えられます。
お金が足りずに途中退学……といった事態にならないよう、十分に注意して学生生活を送る必要があるのです。
返済が難しい場合の対策
減額返済
災害やケガ・病気による失業などで返済が困難でも、減額してくれれば継続して返済できるという場合に申し込める制度です。
月額が安くなることで無理なく返済が可能になります。
当初の割賦金を減額すれば返済可能であることが認められれば、一定期間は月の返済額が減額されます。
ただし、返済総額は変わらないため、減額する代わりに返済期間は延長になります。
減額返済は開始希望の2ヶ月前までしか受け付けていません。余裕をもった申し込みが必要です。
返済期限猶予
減額返済と同様、返済困難な事由が発生した場合に申請できる制度です。
審査によって承認された期間については返済する必要がありません。
適用期間は通算10年が限度ですが、災害や傷病など生活保護受給中などの一定の条件を満たす場合は制限を超えて猶予もできます。
返還免除
返済免除とは、本人が死亡して返済できない、精神もしくは身体の障害によって労働能力を失ってしまった等の理由がある時に申請できる制度です。
願い出が認められると、返済残高の全額または一部が免除されます。
奨学金とは|融資してもらえる種類や団体を紹介 まとめ
家庭が経済的に困窮していたとしても、奨学金の貸与を受けることでお金の心配なく勉学に励むことができます。
一方、給付型以外はあくまでも「借金」であるため、卒業後は利子を付けて返済しなければなりません。
借り入れた金額によっては月に1万円以上の返済になるため、働き始めたばかりの月給では返済が難しくなる可能性もあります。
卒業後の返済スケジュールまで頭に入れて、無理なく返済できる範囲の金額で借り入れるようにしましょう。