固定資産税が払えない!自宅が競売にかけられる前にするべき対策
住宅や土地を所有していると、さまざまな税金が課されます。
中でも有名なのが「都市計画税」そして「固定資産税」でしょう。
毎年必ず納税が必要な税金であり、人によっては「負担が大きすぎて払うのに苦労している…」という人もいるかもしれません。
固定資産税を納付できない場合、どのような手続きが行われるのでしょうか?
また、納付を免除してもらえる制度を利用することはできるのでしょうか?
今回は、固定資産税を納められない場合の市町村の対応と、減免などの対策について解説します。
このページの概要
固定資産税とは
固定資産税とは、土地や建物などの不動産、償却資産(事業用資産)を所有している場合に納税義務がある地方税の一種です。
1月1日時点で不動産を所有している人に納税義務があります。
「土地」は宅地だけでなく山林、牧場、田畑も対象です。
「建物」は自宅のほか、店舗や工場なども含まれます。
償却資産とは
償却資産とは、土地や家屋以外の「会社で使用しているパソコンやコピー機」といった備品で、時間の経過で価値が目減りしていくものを指します。
自動車税の対象になる自動車や、特許権などの無固形資産は償却資産には含まれません。
毎年1月1日の時点での所有者が、1月31日までに償却資産の内容を市区町村に申告することで課税される仕組みです。
固定資産税の税率
固定資産税の金額は、基本的に「固定資産税評価額」によって決まります。
計算式は以下のとおりです。
固定資産税=評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)
税率は自治体によって異なるため、1.5~1.6%を課す自治体もあります。
固定資産税評価額は固定資産税の基準になる価格で、3年に1回の見直しでその時点の地価を参考に金額が決定されます。
固定資産税を滞納するデメリット
固定資産税を滞納してしまった時に最も避けるべきなのは「何もせずに放置しておく」ということです。
滞納にはさまざまなデメリットがあり、滞納することでますます納税が困難になります。
ここでは、固定資産税を滞納するデメリットを解説します。
延滞税を課される
固定資産税を滞納した場合は滞納した期間に応じて延滞税が課され、従来よりも多くの税金を納める必要があります。
この延滞税の支払い義務は、固定資産税の納税義務と同じく自己破産しても免れることはできません。
延滞金の税率は納期期限の翌日から1ヶ月を経過するかどうかで大きく変わる点に注意が必要です。
詳しい税率は以下のとおりです。
期間 | 本則の割合 | 特例の割合 | 令和2年中の割合
特例基準割合1.6% |
令和元年(平成31年)中の割合
特例基準割合1.6% |
---|---|---|---|---|
納期限の翌日から1か月を経過する日まで | 年7.3% | 特例基準割合(注)+1% | 2.6% | 2.6% |
納期限の翌日から1か月を経過した日以降 | 年14.6% | 特例基準割合(注)+7.3% | 8.9% | 8.9% |
引用元:小平市|納期限を過ぎると/延滞金
平成26年1月1日以後の延滞金には「特例基準割合」を用いて計算します。
1ヶ月を経過するまでは2.6%ですが、1ヶ月を超えた場合は年8.9%の延滞金が発生するのです。
万が一延滞税が発生する状況でも、どうにかして延滞してから1ヶ月以内に完済することを目指しましょう。
給与の差し押さえ
給与の差し押さえが行われる可能性もあります。強制的に給与から天引きされ、税金の返済に充てられます。
おまけに、天引きの件が市役所から会社に連絡がいくことで、固定資産税を滞納していることが会社に知られてしまいます。会社内の信頼を失う結果になりかねません。
もともと生活が苦しくて納められないうえ、そこで給与を差し押さえられると生活はさらに厳しくなるでしょう。
自営業・フリーランスの場合は給与ではありませんが、代わりに自宅のクルマや貴金属などの「動産」が差し押さえの対象になります。
自宅の差し押さえ
自宅を差し押さえられる可能性もあります。
自宅や土地などの不動産に「差し押さえ登記」が行われ、自宅であっても任意に売却することができなくなります。
とはいえ、差し押さえされても日常生活をそのまま送ることも可能です。
住宅ローンを滞納していない限り、すぐに追い出されることはありません。
公売にかけられる
差し押さえがあっても状況が改善されない場合、最後のステップに進むことになります。
差し押さえられた財産は競売ではなく「公売」という形式で第三者に売却されます。
売却資金が納税資金に充てられることになるのです。
ちなみに住宅ローンを滞納した場合には「競売」が行われます。
「競売」は民間の銀行等の金融機関が行うもの、「公売」は官公庁が滞納する税金を回収するために行うもの、という違いです。
公売で買い手が見つかった場合、所有者ではなくなるため家を出なくてはいけなくなります。
不動産を相続した場合の固定資産税
原則は相続人が納める
相続した不動産の固定資産税は相続人(相続で財産を受け取った人)が納めるのが原則です。
本来は1月1日時点の所有者が納税する義務がありますが、登記名義人が死亡すればもちろん納税することができません。
そのため、所有の権利が相続人に移ります。
権利と同時に、固定資産税を納める義務も相続人に移ります。
相続人が複数の場合はどうする?
マンションを相続した場合は、部屋ごとに相続人で分けることもあります。
複数の相続人で共同負担する場合は、固定資産税も持分に応じて負担するのが原則です。
相続放棄した人に支払い義務はある?
相続放棄をした人ははじめから相続に参加していないとされるため、固定資産税の納付義務はありません。
また、遺産分割に参加していても分割協議中は登記は被相続人のままです。この場合も分割が完了していない以上は支払い義務がありません。
未成年者は払う義務はある?
未成年者であっても、相続不動産を受け取った場合は税金を納める義務があります。
とはいっても、未成年では収入も乏しく、納税する資力がありません。この場合は未成年を管理する義務がある保護者が納税することになります。
納税が難しい場合の対処法
通常分納
まったくお金がないということでなければ、分納によって納税するのが有効です。
固定資産税は原則一括での納付ですが、年4回あるいはは更に細かく分納することも可能です。
役所で徴収担当者と口頭での手続きを行ったり、電話での手続きをしたりすることで、納付書が手元に送られます。
ただし、分割であっても延滞税は免除されません。
分納した上で滞納することは許されないため、弁解の機会が与えられずいきなり差し押さえに進むリスクが高まると考えられます。
納税猶予(徴収猶予)
徴収猶予とは、固定資産税の納付を1年間猶予する制度のことです。
滞納した固定資産税を分割して支払えるだけでなく、延滞税までかからない点で有利といえます。
ただお金がないだけではなく、災害や事業の不振などの事情で納付できないという条件があるため、誰でも受けられるわけではありません。
猶予であれば、期間中に財産を差し押さえられることはありません。ただし、適用のための手続きが煩雑で手間がかかることは理解しておきましょう。
減免措置の依頼
すべての人に適用されるわけではありませんが、固定資産税には減免の措置が存在します。以下のようなケースで固定資産税の減額や免除を受けることが可能です。
- 生活保護を受けている
- 災害で固定資産の価値が著しく下落している
- 相続不動産が公益の場として利用されている
条件が限定されるため、家計が厳しいからといってすぐに利用することができません。
換価の猶予
換価の猶予とは、納税者の財産の換価をただちに行うことで事業の継続や生活の維持に困難が生じる場合、かつ納税者に納税の誠実な意思がある場合に1年間に渡って猶予を受けることです。
徴収猶予を利用できず、すでに財産を差し押さえられている場合に選択できます。
換価の猶予を受けても延滞金は完全にはなくなりません。
ただし1/2に減額されることもあり、全体として返済総額は少なくなる特徴があります。
条件に「誠実な態度」が設定されている通り、職員の裁量で決められることが多い制度です。
役所へ相談を持ち掛ける時点から、「税金を納めたい、でも事情があってできない」ということを真摯に説明するなど、誠実な態度をこころがけたいところです。
自宅を売却
どのような制度を使っても固定資産税を納税できない場合、最後の手段として当該物件を売却して納税資金に充てる必要があります。
固定資産税の負担から解放され、不動産の維持・管理の必要もなくなります。
事前に現金化すれば、遺産分割がやりやすいというメリットもあります。
自分の意思で売却すれば競売でなく「市場価格」での売却になり、競売よりも高い値段で売却できる可能性が高いです。
競売は市場価格の70%程度での売却になるのが一般的で、思ったより手元に残るお金が少ないことが懸念されます。
どうせ手放してしまう未来が変えられないのであれば、少しでも高く売れる方法を選択するべきです。
新型コロナの影響で納付が厳しい場合
新型コロナウイルスの影響で固定資産税の納付が難しい場合、納付の猶予・減免の措置を受けることができます。
新型コロナウイルスの影響で住民税や固定資産税等の地方税を支払えない場合、以下の条件を満たすことで「徴収猶予の特例」として納税を1年間は猶予してもらえます。
中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税等の軽減措置
厳しい経営環境にある(※)中小事業者等に対して、令和3年度課税の1年分に限り、償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準を2分の1又はゼロとする。
(※) 令和2年2月~10月までの任意の3ヶ月間の売上高が、前年の同期間と比べて、
30%以上50%未満減少している者 2分の1 50%以上減少している者 ゼロ
減免措置は一時的な救済策にしかならない
固定資産税を減免の措置を受ければ、家計も助かるのは間違いありません。
しかし、納税を猶予されているだけです。
納税の義務は消えるわけではなく、1年が経過すればあらためて納付する必要があります。
また、翌年分の税金は普通に発生するため、2年分の税金をまとめて納付することになってしまいます。せっかく猶予を受けても、2年分を全額納税できなければ意味がありません。
ただ納税猶予を受けて満足するのではなく、翌年に向けて収入面の抜本的な改善が必要でしょう。
万が一自宅を差し押さえられた場合
固定資産税をはじめとした税金の滞納の時効は5年です。しかし、差し押さえを行うことで税金の時効は中断されます。
その後も滞納が続くと最後の手段として公売にかけられます。これを防ぐためには、どのような手を打つ必要があるのでしょうか?
市役所と返済計画を話し合う
本来、差し押さえを解除する方法は滞納している固定資産税の一括払いだけです。
しかし、どうしても納税が難しい場合は、役所に出向いて分割納付や納税猶予お願いすることも可能です。
基本的には通常分納を認めてもらい、少しずつ返済していくことになります。
差し押さえられてしまう前に、支払いが厳しいと分かった時点で相談に行くのが本来あるべき形ですから、差し押さえの有無にかかわらずすぐに行動しましょう。
リースバックを利用する
固定資産税は、土地や建物を所有している限り必ず発生します。
納税しなくて良くするためには手放すしかありません。
しかし、手放せばその家にはもう住めないのがネックになります。これを解決する手段が「リースバック」です。
売却後に賃貸借契約を結ぶことで、同じ家に住み続けることができるようになります。
売却によって得た代金によって固定資産税の納付に当てることができ、固定資産の納税義務は翌年から買い手側に移るため、納税負担からも解放されます。
ただし、賃貸に移行する以上は家賃が継続して発生することに注意が必要です。
また、リースバックは売却益によって住宅ローンを完済する必要があります。
残債が多く残る場合はリースバックで対応できないため、通常の売却など別の方法を模索しましょう。
固定資産税が払えない!自宅が競売にかけられる前にするべき対策 まとめ
今回は、固定資産税を納められない場合の市町村の対応と納税者側の対策について解説しました。
固定資産税を納められない時の対策にはいくつか種類がありますが、「徴収猶予」や「減免措置」は条件が厳しいため誰でも受けられるわけではありません。
基本は「分割」によって納付していくことになりますが、それでも厳しい場合は「売却」「リースバック」なども検討していく必要があります。
そのような事態を招かないよう、固定資産税を毎年きちんと納めるだけの収入を得られるような収益改善を進めていきましょう。