質屋でお金借りる仕組み|利息や預けられる物を解説
質屋は古くからある庶民のための金融事業者です。
今でも駅や町中で宣伝を見かけることがありますし、ネット広告にも良く登場します。
質屋は「品物を預けてその代わりにお金を借りるところ」ということは知っていても、金利や利用方法など詳しいことまでは知らない人が多いでしょう。
歴史ある金融機関「質屋」を上手に利用してお金をやりくりしましょう。
このページの概要
質屋でお金を借りるしくみを解説
質屋の基本
1.担保を持っていくとお金を借りられる
質屋とは利用者が持っていく「質草(しちぐさ)」、つまり担保にする品物に合わせて相応のお金を借りることができるお店のことです。
担保は借りたお金が返せなくなったときに没収される品物です。
現在では宝石やブランド品、時計などが良く用いられています。
「人質」という言葉の元になっているのも「質」という言葉です。
江戸時代には実際に質屋に家族を質として置いていくこともありました。質屋は日本の文化に根ざした金融事業者です。
2.借りられる期間は3ヶ月
店によっても異なりますが、一般的に質屋でお金を借りることができるのは3ヶ月と短期間です。
この間に全額返済できれば預けた「質」は戻ってきますし、一部が返済できれば返済期間を延ばすことも可能です。
ただ、返済できなかった場合には「質流れ」という状態となり、預けた質は質屋の所有物となり売却されます。
借入金額と金利の相場
1.買取価格の70%~80%程度が融資の目安
質屋から借りられる金額は、品物の買取価格の70%~80%程度が相場です。
3万円を借りたいという場合には、買取価格が4万円から5万円の品物を用意すればいいということになります。
買取価格ごとに借りられる金額は以下のようになります。
・借入金額の目安
買取価格 | 借入金額 |
---|---|
5万円 | 4万円 |
10万円 | 8万円 |
15万円 | 12万円 |
20万円 | 16万円 |
25万円 | 20万円 |
もし、10万円を用意したいと考えるなら、およそ12万円から15万円程度の価値になる品物があれば良いでしょう。
いくつかの品物を合計して12万円くらいなるところで質屋に持っていきましょう。
2.金利は高め
質屋は基本的に「月利」で金利を付けています。
カードローンは「年利」ですので、勘違いしないように注意しましょう。
アコムやプロミスなどの消費者金融業者には「貸金業法」という法律が適用されますが、質屋には「質屋営業法」という法律が適用されます。
そのため、金利に関してはまったく別の考え方をする必要があります。
質屋でお金を借りるときにかかる金利は「月利0.95%~8%」です。
担保を預けるうえに利息もかかるので注意しましょう。
品物を預かって、そのまま返すだけでは利益は出ないため、貸付金に対して利息がかかるのは当然と考えましょう。
3万円を月利8%で1ヶ月借りたときの利息は以下のようになります。
・3万円×8%=2400円
ちなみに、貸金業者で年率18%で3万円を1ヶ月借りた場合の利息は443円ですので、かなりの高金利と言っていいでしょう。
利息のしくみも独特
質屋でお金を借りるときにかかる利息は「月割計算」で算出されます。
月単位での計算になるので、1日でも借りれば1ヶ月分の利息が必要になります。
また、月割計算には「暦月計算」と「満月計算」の2通りがあります。
・暦月計算:毎月末日を締日とする。4月15日に借りたら4月30日までが1ヶ月分で5月1日から2ヶ月分と計算する。
・満月計算:借りた日から1ヶ月単位で計算される。4月15日に借りたら5月15日までが1ヶ月分の利息となる。
流質期限とは
質屋では、返済期限のことを「流質期限」と呼びます。
流質期限は3ヶ月に設定されることが多く、期限内に元金と利息を支払えば品物は返却されて取引は終了となります。
逆に、流質期限までに元金と利息を支払わなかった場合には「質流れ」と言って、品物の所有権が質屋に移って、利用者の手元に戻らなくなります。
大切な品物を預ける場合は質流れにならないよう期限をしっかり確認しておきましょう。
質流れにはしたくないが、流質期限までに返済できない場合には、「期限の延長」を申し出ることもできます。
もし、支払いのお金が足りないという場合でも利息さえ支払えば、流質期限を延長してもらうことができます。
質屋から流質期限について連絡が来ることはないので、自分の知らないうちに期限が過ぎてしまうこともあります。
そのため、預けた本人がしっかりとスケジュールを管理することが必要です。
流質期限が過ぎてから延長を申し出ても、すでに質流れになっている場合には受け付けてもらえません。
取り立てがない
いったん品物を質屋に預けたら、その先は質屋から何も連絡が来ることはありません。
流質期限まで何もしなければそのまま品物が質流れになるだけです。
質入れでは、流質期限までに返済しなくても督促や催促、取り立ては一切ありません。
質屋からお金を借りても催促や取り立てがないことは、全国質屋組合連合会の公式サイトにも記載されています。
「期限内に返済ができない場合は、預けた品物は質流れしてしまいます。この場合、貸付融資額の返済義務はなくなり、質屋からの返済請求もありません。」
消費者金融業者などからお金を借りて返済期限を過ぎてしまったら、催促の連絡がありますし、未納が長引けば督促状が届きます。
そうなったら家族など同居の人に発覚してしまいますが、質屋の場合にはそういった心配は無用です。
もし品物が不要になったら、あえて返済しないという選択をすることもできます。
また、返済しなかったからといって、信用情報に傷がつくこともありません。
品物は安全に保管してもらえる
質屋は自分の持ち物を担保としてお金を借りるシステムですが、大切な品物を預けることに不安や抵抗を感じる人も多いでしょう。
質屋は公安委員会の定める厳格な規則に基づいて造られた「質蔵」という倉庫で保管されます。
そのため、紛失や破損などを心配する必要はありません。
公安委員会による質蔵の基準は以下のようになっています。
・保管設備の主要構造部は、建築基準法第2条第7号に定める耐火構造とする。
・保管設備の開口部には、建築基準法法施工例第112条に定める特定防火設備を設ける。
・保管設備の出入口には、消化器を備え付ける。
・保管設備には、防湿上および防水上有効な措置を講じる。
・固くて丈夫な扉および複数の鍵の設置など防犯対策のための必要な措置を講じる。
・ネズミなどの侵入を防止する措置を講じる。
上記の条件を満たした質蔵を設置しなければ、質屋は営業できません。
警察を管理する立場である公安委員会の監督のもとで運営されているので、品物は安全に保管されます。
質屋に預けられる品物
質屋で預けることのできる代表的な品物
質草は安全に保管されますが、何を預けたら良いのか分からない人も多いでしょう。
基本的には「誰か使いたいと思っている人がいるもの」であれば質入れすることができます。
とはいえ、何でも質屋に持っていけるわけでもありません。
・質屋に預けられる代表的な品物
品物 | 特記事項 |
---|---|
時計 | 電池が止まっていると評価が下がる。 |
金やプラチナなどの貴金属 | デザインが古くても評価は下がらない。 |
ブランド品のバッグ・財布・小物など | ゴミやホコリを取り除くと評価が上がる。 |
カメラ | レンズなどの周辺機器も質入れできる。 |
パソコン、テレビなどの家電製品 | 初期化されることなく保管してもらえる。 |
スマートフォン | 個人情報を見られることはない。 |
ブランド品や貴金属を持っていないという人でも、電化製品やスマホなら持っているケースが多いでしょう。
スマホは機種によっては高額の査定が出ることがあります。
・iPhoneを預けた場合の借りられる金額の目安
機種 | 融資額の目安 |
---|---|
iPhone11Pro | 7万円~8万円 |
iPhone11 | 4万2000円~4万8000円 |
iPhoneXS | 3万8000円~4万4000円 |
iPhoneX | 3万1500円~3万6000円 |
とはいっても、スマホを預けてしまったら日常生活に支障がある人もいるでしょう。
店舗によりますが、釣具やゲーム機、楽器などの趣味用品も預けることができるケースがあります。
預けられるものの選択肢を増やしたい人は、なるべく多くの品物を取り扱っている質屋を探しましょう。
高額査定が出やすい品物
1.高級時計
質屋で高額査定が出やすい品物の代表が高級時計です。ハイブランド品であれば、かなりの額が期待できます。
・時計ブランドごとの融資額の相場
ブランド名 | 融資額の相場 |
ロレックス | 40万円~150万円 |
ハリーウィンストン | 100万円~200万円 |
シャネル | 20万円~50万円 |
オメガ | 10万円~30万円 |
カルティエ | 10万円~40万円 |
タグホイヤー | 10万円~25万円 |
セイコー | 8万円~15万円 |
これら以外にも、グッチなどのハイブランドやカシオなども質入れできることがあります。
お店によって評価額が異なることがあるので、質入れの前に確認しておきましょう。
2.宝石
宝石はデザインが古くても査定に影響しない品物のひとつです。
デザインではなく、宝石そのものの価値を評価するからで、何十年も前に買ったものでも質入れすることができます。
・宝石の種類ごとの融資額の相場
宝石 | 融資額の相場 |
ダイヤモンド | 10万円~150万円 |
エメラルド | 3万円~70万円 |
ルビー | 7万円~120万円 |
サファイア | 5万円~150万円 |
昔に買った結婚指輪や婚約指輪、または親の形見でも質入れできます。
品物が古いと保証書や鑑定書を紛失していることもありますが、質入れには関係ありません。保
証書、鑑定書、鑑別証がない品物でも質入れ可能です。
質屋には査定士が常駐しているので、鑑定証などがなくても品物の価値を正しく判定できます。ただ、書類が揃っていたほうが品物の価値が高まることはあり得ます。
自動車も質草にできる
一部の質屋に限られますが、自動車を質入れすることができます。
どうしても高額の融資を質屋から受けたいケースでは、選択肢のひとつにしておきましょう。
自動車を担保にお金を借りるときに必要な書類は以下のようになっています。
・印鑑証明書と実印
・車検証
借入金額が大きくなる傾向があるため、返済期間を長めに設定してもらえることがあります。
注意したいのは、「乗ったまま借りられる」とうたっている質屋です。
質屋ではなく「車担保融資」や「車金融」などと呼ばれることもある業者のなかには、預け入れした車を本人が質入れした状態なのに乗り続けられるとしているところがあります。
これは悪質業者・違法業者である可能性があるので避けたほうがいいでしょう。
乗ったままでも質草にできるということは、利用者が借り入れ期間中に事故を起こして自動車の価値がなくなったとしても、取り立てして貸付金を回収されてしまいます。
通常、質屋は取り立ては行わないので、貸付金回収ノウハウを持っているのは不自然です。
質屋に自動車本体を預けるという方法以外で高額融資を受けるのはリスクが高いと言えます。
電化製品も可能
テレビや電子レンジ、パソコンといった電化製品も質入れすることができます。
とはいえ、こういった製品は季節ごとに最新モデルが出るものですので、質入れしている3ヶ月の間に型落ちモデルとなって価値が下がる傾向があるため、通常の借入金額よりも10%から15%ほど低く見積もられるのが一般的です。
特に電化製品は型落ちするのが早く、5年以上前のモデルは質屋から断られることもあります。
事前に取り扱ってもらえるかどうか確認しておきましょう。
なかには、古い家電製品でも非常に低い金額ですが、貸してくれるケースもあり、質屋ごとに対応は違います。
できるだけ高く査定してもらうには、取扱説明書やリモコン、専用ケーブルなどの付属品をすべてそろえておくことも大切です。商品の箱もあればなお良いでしょう。
微妙な品物としてゲーム機があります。
ゲーム機も3年ほど経てばモデルチェンジされるため、価値が下がっていきそうですが、なかには古いモデルに価値が付いていることがあり、質屋によってはしっかりと査定額が出ることもあります。
事前に良く確認しておきましょう。
スマートフォンを質入れするときの注意点
スマートフォンを質入れする際には、通信規制されていないかどうかを確認しましょう。
いわゆる「赤ロム」と呼ばれる状態の端末は、携帯会社に所有権があるので質草にはできません。
赤ロム端末になる原因は以下のようなものです。
・分割払いで購入したが、端末本体の支払いが残っている。または滞納している。
・紛失届または盗難届が提出されている。
・契約に不正があっった。
自分で契約した端末であれば紛失届が出されていたり、契約に不正があったりする可能性は低いはずです。
ただ、端末代金が未払いになっていないよう注意して質入れしましょう。
分割払いの途中の場合には、支払いが滞納していなければ「赤ロム」にはならないので質入れできることがあります。
質屋でお金を借りる方法
基本の流れ
質屋でお金を借りる流れは以下の通りです。
1.持参した品物を査定してもらう。
2.身分証明書を提出する。
3.書類に必要事項を記入する。
4.現金と質札を受け取る。
査定はすぐにその場でやってもらえるので、早ければ最短15分で手続きは終わります。
身分証明書としては、運転免許証やパスポートが良いでしょう。マイナンバーカードでも代用できますが、個人番号はなるべく他人に知られないようにするのが賢明です。
また、運転免許証などの「顔写真入りの身分証明書」を持っていない人は、健康保険証や年金手帳などで代用できないか事前に確認しておきましょう。
質札は大切に保管しよう
現金と一緒に受け取る「質札」は、借入金を返済して品物を返還してもらうときに必要です。
品物の預り証のようなもので、流質期限などの記載されているので取引が終わるまで失くさないように注意しましょう。
もし紛失してしまった場合には、すぐに質屋に連絡して、拾った第三者が悪用しないようにします。
質札がない状態で品物の受け戻しを行う場合には、身分証明書が必要になるので注意しましょう。
この質札は再発行してもらえることはありません。1回限りの発行です。何度も発行できるようでは、品物の所有権がバラバラになってしまうからです。失くさないように注意しましょう。
また、家族に借り入れが発覚するのは困るというケースでは、質札を見られないように保管方法にも注意しましょう。
買取もできる
質屋では、質草の価値によって借入の金額が決まります。
なかには、思ったよりも低い査定が出てしまうこともあるでしょう。
そういったときには、思い切って査定額が高くなる買取に変更することも考えておきましょう。
完全に品物を手放すことになりますが、より多くの現金を受け取ることができます。質入れの途中で買取に変更することも可能で、その場合には買取金額から質入れの元金と利息が差し引かれます。
質入れでは流質期限までに返済できなければ質流れとなりますが、以下のようなケースでは質流れよりもお得になります。
・質入れの元金と利息を差し引いても買取金額が上回る場合。
・相場の変動によって質草の価値が上がった場合。
高額融資になりがちな品物の場合には、買取のほうがお得になるケースが多くあります。
また、質屋での買取よりも専門店での買取のほうが高額に査定されることも多く、もし査定額に満足できない場合には、いったん引き取って専門店に査定してもらうのも良いでしょう。
利用者本人の審査はない
質屋の大きなメリットは、利用者本人の審査は行われない点です。
通常、消費者金融業者や銀行のカードローンでは、申込者の年収や信用情報などを審査して、それに通過できないと現金を手にできませんが、質屋では、品物を持ち込んだ人がどのような人であっても現金を手にできます。
金融機関から融資を受けられないのは以下のような人です。
・安定収入がない。
・年齢制限に引っかかっている。
・他社借入の件数が金額が多い。
・短期間に複数のカードローンに申し込みした。
・携帯電話の端末代やローンの支払いなどを滞納した。
・過去に自己破産や個人再生をしたことがある。
こういったケースでも、質屋では質草さえあればお金を借りることができます。
もし借りたお金が返済されなければ、質屋は品物を現金化できるので、本人を審査する必要がありません。
質屋でお金借りる仕組み|利息や預けられる物を解説 まとめ
質屋は、自分が持ち込んだ品物を担保としてお金を借りるシステムの金融事業者です。
金利や借入方法は独特ですが、手軽に利用できます。
元から価値のある品物だけでなく、家電製品なども質屋に入れることもできます。利用者本人の審査は一切ありません。