保証人とは|連帯保証人とは何が違う?どんな時に必要?
賃貸物件のローンに申し込む時「保証人」を求められることがあります。
「そもそも、保証人ってどういう制度なの?」「保証人と連帯保証人って何が違うの?」
日常ではあまり使わない言葉なので、このような疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。
保証人の制度を理解しておかないと、後日トラブルに巻き込まれる可能性もあります。
そこで今回は「保証人」「連帯保証人」の特徴とそれぞれの違い、保証人が求められるケースや注意点について解説します。
このページの概要
保証人とは
保証人とは、債務者が借りたお金を返済しない場合に、債務者に代わって借金を返済することを約束した人のことです。
債務者が返済不能に陥って借金を返済できない場合、債務者に代わって借金を返済する義務を負うことになります。
一方で保証人は、以下の3つの権利が保障されています。
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
- 分別の利益
もう1つの検索の抗弁権は「私の財産より債務者の財産を先に差し押さえて下さい」と主張できる権利のことです。
つまり、仮に債務者が返済不能に陥ったり財産があるのに返済を拒否したりする場合でも「最初に本来の債務者に請求してください」といえる権利があります。
保証人と連帯保証人の違い
一般的に「保証人」と「連帯保証人」は同じように考えられがちですが、実際には全く異なる制度です。
保証するべき範囲や債務者に代わって債権者から督促を受けるタイミングが全く異なります。
「連帯保証人」とは、保証人制度に与えられる「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」などが与えられない保証人制度です。
連帯保証人になったものの、支払いができないトラブルが起きている現実があります。
いかに連帯保証人が重い責任を負うか、以下のデメリットから考えてみましょう。
催告の抗弁権がない
主たる債務者が返済不能になった際、連帯保証人には催告の抗弁権がありません。
つまり「まずは主債務者に請求してください」と主張できないのです。
いきなり連帯保証人に請求されても、文句を言わずに支払う義務があります。
検索の抗弁権もない
連帯保証人には検索の抗弁権もありません。
主債務者が返済を拒否した場合には連帯保証人のところに請求がきますが「まずは主債務者の財産を差し押さえて下さい」といえないということになります。
仮に主債務者に財産が残っているのに単に返済を拒んでいるだけであったとしても、連帯保証人は債権者からの請求に応じて返済する義務があります。
このように保証人と連帯保証人は責任の範囲が全く異なるため、貸金業者や賃貸業者が保証人を求める場合、連帯保証人にしているのが大半です。
分別の利益がない
「分別の利益」とは複数の保証人が債務者に代わって返済する場合、保証人の人数で按分した金額だけを負担すれば良いという制度です。
2人の保証人がいた場合、500万円の返済だとしても1人が負担するのは250万円までで済みます。
一方の連帯保証人にはこの権利が認められていません。
連帯保証人が何人いたとしても、借金の全額を返済する義務を負います。
民法改正によって責任の範囲が変わっている
2020年の民法の大改正によって連帯保証人制度も改正されています。
例えば賃貸物件に入居する人の保証人のケースで考えてみましょう。
従来の民法では「一切の債務」を保証しており、家賃の滞納が続くと全ての家賃について連帯保証人が返済する義務がありました。
これではあまりにも連帯保証人の負担が重いため、2020年の民法改正ではそれまで連帯保証人は含まれていなかった「極度額」のルールが適用されています。
極度額とは、立て替えなければいけない限度額のことで、極度額の定めがない契約は無効です。
例えば5万円の家賃を1年間滞納すると滞納総額は60万円ですが、仮に極度額が50万円であれば連帯保証人が立て替えるのは50万円までです。
それ以上の金額を支払う必要がなくなります。
保証人になるために必要なモノ
保証人・連帯保証人になるには、所定の書類の提出を求められます。
代表的な書類等は以下のとおりです。
- 収入証明書
- 印鑑証明書
- 実印
- 住民票 等
連帯保証人になるための基準
連帯保証人になる人の基準は法律で決められていないため、原則としては審査を通れば誰でもなることは可能です。
しかし、多くの不動産会社では連帯保証人になる人に一定の条件を定めています。
一例としては以下のとおりです。
- 契約者の親族
- 代わりに支払えるための定期収入がある
- 連絡が取れる地域に住んでいる 等
保証人(連帯保証人)が必要な借入れ手段
保証人や連帯保証人は、融資などの審査を受ける場合に求められることがあります。
どのようなケースで求められるのでしょうか?
本人に収入がない場合
例えば賃貸物件への入居を考えている場合に通常は「入居審査」が行われ、本人の収入や職業、過去のローンの返済実績などが審査されます。
しかし、事情があって無職の人もいるでしょう。
収入がないと審査の通過は難しいことがほとんどです。
とはいえ、無職であっても賃貸物件を借りることはできます。
代表的な手段は、保護者が契約者になることです。
学生や無職は入居審査の収入基準を満たしていないため、直接契約者になれません。
そこで保護者が契約者になることで契約することができます。
それが難しい場合、連帯保証人を立てることで本人による契約が可能です。
契約者と同等以上の返済能力を有する人(通常は両親)を連帯保証人にすることで、本人の収入基準の不足をカバーできます。
自営業者が事業資金の融資を受ける場合
自営業者が銀行などから融資を受ける際に連帯保証人を求められることがあります。
代表的なのは銀行の事業融資です。
事業者向けカードローンなどと比較すると金利が低めで、事業規模や内容によっては数千万円~1億円以上の融資を受けることも可能です。
一方で審査は厳しく慎重に行われます。金利が低い分、万が一の貸し倒れも起こせないためです。
さらに融資を受けるために公的機関である信用保証協会の保証や不動産などの担保の提示を求められるほか、場合によっては保証人の用意が必要になることがあります。
奨学金は保証人、連帯保証人の両方が必要
奨学金を借りて大学に通うことは珍しいことではありません。
多くの人は「日本学生支援機構」の奨学金を選択しますが、利用する際は「保証人」「連帯保証人」の両方が必要になる点に注意が必要です。
貸与型奨学金は国や地方自治体、支援機構などからお金を借りるため、貸与が終われば卒業後に返済する義務があります。
連帯保証人は奨学生本人と連帯して責任を追う人のことで、原則として「父母」が該当します。
一方の保証人は、本人と連帯保証人が返済できなくなったときに奨学生に代わって返済する人です。
奨学生本人や連帯保証人とは別生計であることが条件で、父母を除く4親等内の親族であることが条件です。
多くの場合は「おじ・おば」などが該当します。
さらに、保証人・連帯保証人とも条件が細かく規定されています。
詳しく知りたい方は以下のリンク先で確認できます。
ローンで保証人が求められるケースまとめ
リース会社や金融機関の審査では審査結果が保留され、連帯保証人を立てられるかを問われる場合があります。
そのままでは審査の通過はできないものの、連帯保証人がいれば借入可能というケースです。
どのような時に、連帯保証人が求められるのでしょうか?
収入が少ない
パート収入しかない人(主婦など)や学生アルバイト、フリーターなどが収入不十分である場合、自分の収入では審査の条件をクリアできません。その部分を補うために、連帯保証人が求められることがあります。
属性情報のスコアが不足している
ローンの審査内容の詳細は公表されていませんが、一般的には属性情報と呼ばれる返済に関するステータスを数値化する「スコアリング審査」が実施されます。
多くは申込時に申請する内容で、例えば「勤続年数」が審査されます。
会社員であっても入社したて・転職したての人はずっと仕事を続けていけるかが不透明です。
何年も同じ会社に勤めている人と比較すると、返済能力が低いと判断される場合があります。
「勤務形態」も属性の一部です。
非正規よりも正規の方が安定した収入が得られ、評価が高くなりやすいのが一般的です。
特に大手企業の会社員や公務員は景気が悪化しても解雇されずに雇用が守られる安心感から、評価が高い傾向にあります。
このような「審査のスコア」が不足する場合に連帯保証人を求められます。
離婚した場合でも連帯保証人はやめられない
配偶者が購入したマイホームの住宅ローンについて連帯保証人になったあとに離婚した場合、連帯保証人の債務はどうなるのでしょうか?
実は、離婚したとしても連帯保証人の契約は解除されません。
連帯保証の契約は債務者ではなく、債権者と交わしているためです。
債権者からすれば、夫婦間の離婚は関係ないのです。
配偶者だからといってむやみに連帯保証人になると、将来にトラブルにつながることがあります。
夫婦仲によっては将来的な離婚の可能性はゼロではないでしょう。
「万が一離婚した時はどうするか」を話し合っておくことは不可欠です。
嫌な気持ちになりますが、将来のリスクを減らすためにも夫婦間で書面の取り交わしをしておくほうが安心です。
保証人を用意できない時はどうする?
保証人でも連帯保証人でも、万が一債務者が返済できない場合は借金を肩代わりしなければいけません。
「なりたい」という人は当然いないでしょう。
債務者が頼む必要がありますが、特に連帯保証人は誰も見つからないことは考えられます。
例えば保証人を探す目的が「賃貸物件に入居」であれば、保証会社を利用する手もあります。
保証会社は連帯保証人を代行する業者のことです。審査を通過して保証会社に保証料を支払うことで、連帯保証人の役割を担ってもらうことができます。
手数料は家賃の30~70%あたりが相場です。
契約者が家賃を払えない状態に陥ったり万が一行方不明になったりしたとき、保証会社が立て替えることになります。
現在は契約者と連帯保証人の両方からの回収が難しいケースもあるため、保証会社の利用が必須になっているパターンもあります。
債務者が債務整理した場合の責任はどうなる?
主債務者が自己破産をして借金をチャラにした場合、連帯保証人の債務はどうなるのでしょうか?
実は自己破産で債務者が免責になったとしても、連帯保証人の責任は消えることがありません。
主債務者が免責になって支払わなくなった債務は連帯保証人が支払う義務があります。
債務整理の中の「個人再生」を債務者が選択した場合は債務が5分の1程度に減額されますが、連帯保証人では従来と同様の責任(5/5全額)があります。
連帯保証人のトラブルは弁護士に相談しよう
連帯保証人は借りた本人と同様の債務を負うことになります。
メリットはほとんどなく、一方でデメリットは大きいため安易に契約することは避けましょう。
本人が支払えなくなった場合に借金を肩代わりする必要があり、一度契約すると解除は難しいのが現実です。
本人が自己破産という形で免責になっても連帯保証人の返済義務は消えることがありません。
こうなってしまった時は、泣き寝入りするしかないのでしょうか?
どうしても連帯保証の義務を果たせない時は、弁護士に相談してみましょう。
仲介によって「分割払いにする」「借金を減額してもらう」などの対応が可能になることがあります。
保証人とは|連帯保証人とは何が違う?どんな時に必要?まとめ
今回は保証人や連帯保証人の違いや制度上の注意点を解説しました。
保証人はいわゆる連帯保証人と混同されることが多い制度ですが、全く別の制度です。
連帯保証人は「検索の抗弁権」「催告の抗弁権」が存在しないため、通常の保証人とは義務の重さが全く異なります。
仮に家族・親族から「連帯保証人になってほしい」と依頼されても、安易に承諾しないようにしましょう。
一方で連帯保証人をつけることで、本人に収入がなくても賃貸物件に入居できるようになることもあります。
制度の詳細を良く理解し、どうしても必要であれば慎重に制度を利用しましょう。