弁護士費用が払えない!無料相談や補助制度の活用方法
「友人に貸したお金を取り返したい!」「離婚を無事に成立させたい!」「消費者金融に過払い金を請求したい!」
理由はさまざまですが、人生の中で弁護士に仕事を依頼することがあるかもしれません。
しかし、弁護士報酬が払えそうもない人もいるでしょう。そんな時は、諦めるしかないのでしょうか?
今回は弁護士費用が払えない時の対処法を解説します。
費用を払えずに悩んでいる方、ぜひ今後の参考にしてください。
このページの概要
弁護士費用とは
弁護士費用(報酬)とは、文字どおり「弁護士に仕事を依頼した時に発生する費用」のことです。
個々の弁護士が基準を定めるため、標準小売価格のように決まった金額は存在しません。一般的に弁護士に支払う費用は下記のとおり、いくつかの種類に分けられます。
- 着手金
- 報酬金
- 実費
- 手数料
着手金
弁護士に事件を依頼した段階で支払う費用です。
成功しなかったときも返金されることはありません。
依頼する事件によっては着手金を無料にしている法律事務所もあります。
着手金にかかる金額は法律事務所によって大きく異なるため、支払う費用の捻出が難しい場合は着手金ができる限り安い法律事務所を選ぶことを検討します。
報酬金
事件が成功した場合、事件が終わった段階で支払う費用です。
成功には一部成功の場合も含まれており、事件が進行している段階で少しずつ支払うのが一般的です。
「成功報酬〇万円」と金額での請求のほか、成功報酬の〇%という形式で発生することもあります。
あくまでも成功報酬のため、まったくの不成功(全面的な敗訴など)では支払う必要はありません。
実費
文字通り、事件処理のための費用です。
裁判を起こす場合でいえば裁判所に納める印紙代や保証金、鑑定料などがそれにあたります。
出張が必要であれば交通費や宿泊費も対象です。
手数料
当事者間で争いがないケースでの事務手続きに必要になる費用です。
遺言作成、遺言執行、登記などの報酬が該当します。
弁護士費用の相場
弁護士費用の相場としては、どのくらいの金額が一般的なものでしょうか?
あくまで相場ですが、「相談費用」「着手金」「報酬」という3つの区分にわけて紹介します。
※紹介する相場はインターネット調べによるもので、実際の費用は弁護士事務所によって大きく異なります。
相談費用
弁護士に依頼する場合、いきなり契約に至ることは少なく、最初は事件内容の相談からはじまります。
その際に支払うのが「相談費用」です。
相場は「1時間1万円程度」が一般的ですが、相談内容によっては相談料無料としている法律事務所も多いようです。
逆に相談料無料と大々的に宣伝されていても、全ての事件に関する相談が無料というケースは稀です。
その事務所で特に力を入れている分野の相談が無料、という意味でとらえておきましょう。
着手金
実際に事件に着手する時に必要になるお金で、着手金の有無は事件の内容によってさまざまです。
法律事務所によっては、完全成功報酬制(成功しない場合は費用は一切発生しない)という事務所もあります。
特に「交通事故」に関しては着手金がかからない法律事務所は多いといわれています。
着手金の相場は事件の種類によって、以下のとおりです。
- 残業代の請求 5~10万円
- 離婚事件 20~50万円
- 遺産分割協議 20~30万円
- 遺留分減殺請求 20~30万円
成功報酬
報酬の相場は、着手する事件によって大きく異なります。
例えば残業代の請求では回収できた金額の20~30%程度、離婚事件では慰謝料・財産分与で得られた金額の10%、といった具合です。
弁護士報酬規程では以下のとおりに成功報酬の基本金額が古くから定められており。現在でも報酬額を決定する参考にされています。
経済的利益の額 | 着手金(税別) | 報酬金(税別) |
---|---|---|
300万円以下の場合 | 8% | 16% |
300万円を超え、3,000万円以下の場合 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3,000万円を超え、3億円以下の場合 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円を超える場合 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
弁護士費用が払えない時に使える方法
ざっと弁護士費用の相場について紹介してみましたが、「やはり高いな……」と感じた人も多いのではないでしょうか?
もし弁護士費用を払える自信がない場合でも、完全に諦める必要はありません。
以下のような方法を使って、弁護士の力を借りることは可能です。
- 無料相談
- 後払い・分割払い
- 法律扶助(法テラス)
- 司法書士に依頼
- 弁護士と再度の話し合い
無料相談を利用する
弁護士事務所では、多くの場合で初回の相談は「無料」です。
初回の相談は無料としているところは多いため、まずは「とりあえず相談」してみましょう。
見積もりを出してもらって費用を比較し、安い報酬を提示してくれた事務所を見つけるだけでも費用を抑えられます。
後払い・分割払い
依頼したいがまとまったお金がない場合、弁護士に「分割払い」の相談が可能です。
10万円の着手金が必要なケースで最初に2万円を支払い、事件が進行している間に毎月2万円ずつ支払う、といった具合です。
裁判所に支払う費用は分割払いできませんが、弁護士費用を分割できればその分を生活費に充てられるでしょう。
あるいは「後払い」という選択肢もあります。
依頼者側に全く資金がない場合、着手金を引き下げる代わりに報酬金を引き上げる、あるいは事件などを通じて回収した金銭の一部を支払いに充当するといった方法で後払いにすることが可能です。
弁護士事務所によっては、示談金・慰謝料など事件終結後に獲得したお金を弁護士費用の支払いに利用できる場合もあります。
弁護士事務所によっては、相手からの獲得金額によって成功報酬が変わることもある点に注意が必要です。
法律扶助(法テラス)
国によって設立された日本司法支援センター(法テラス)が行っている制度です。
「弁護士に依頼したいが懇意の弁護士はいない、費用の余裕もない」といった場合に法律の専門家による援助を受けられたり、裁判のための費用を援助してもらえたりする制度です。
かつては財団法人法律扶助協会が事業として行っていましたが、「総合法律支援法」によって2006年10月2日に資本司法支援センターが業務を開始しました。法律扶助協会の事業は司法支援センターに引き継がれています。
経済的に余裕がない人を対象とする場合は、弁護士費用を立替えてもらうことも可能です。
ただしあくまで立替ですから、原則として毎月分割による返済が求められます。
自己破産などの多重債務事件や離婚などの家事事件、判断力が低下した親のために家庭裁判所に対して成年後見人の選任の申し立てをする場合など、比較的身近な手続きにも利用されます。
生活保護を受給しているなどの事情次第ですが、立替費用の返済が猶予、あるいは免除になることもあります。
利用できる人
民事法律扶助制度は、誰でも利用できるわけではありません。
以下の条件を満たす必要があります。
(1) 収入等が一定額以下であること
以下の資力基準をご覧ください。(2) 勝訴の見込みがないとは言えないこと
和解、調停、示談等により紛争解決の見込みがあるもの、自己破産の免責見込みのあるものは、(2)に含みます。(3) 民事法律扶助の趣旨に適すること
報復的感情を満たすだけや宣伝のためといった場合、または権利濫用的な訴訟の場合などは援助できません。
無料の法律相談の場合は上記(1)(3)の条件を満たす必要があり、弁護士・司法書士費用等の立替制度では(1)(2)(3)の全ての条件を満たす方でないと利用できません。
いずれも「日本に住所を持っていない」「適法な在留資格がない外国人」「法人」「組合などの団体」は対象には含まれません。
司法書士に依頼する
法律に関する専門家というと「弁護士」を真っ先に思い浮かべる人がほとんどでしょう。
しかし中には、弁護士でなくても依頼できる案件もあります。
例えば「自己破産の申請」は弁護士以外でも、司法書士に依頼することも可能です。
一般的に、自己破産における司法書士への報酬は20~30万円が相場といわれています。
事務所ごとに費用が異なるため、一概には言い切れないものの、一般的に弁護士よりは費用が少し安いとされています。
ただし。弁護士と司法書士では、同じ事件でも携われる内容が異なる点に注意が必要です。
弁護士は自己破産の手続きのほとんどを代行できる一方、司法書士は文書作成のみ代行が可能です。
司法書士に依頼した場合は裁判所での面接、債権者集会などには対応できないため自分で応対するしかありません。
費用と手間の違いを比較し、総合的にどちらがお得なのかを考えてから弁護士・司法書士のいずれに依頼するか決めましょう。
万が一払えなくなった場合は再度の話し合いに臨む
弁護士費用に関しては、相談の段階で支払いの金額やタイミングについて十分に話し合ってから決まります。
なので、まったく支払えないケースというのはそこまで多くはありません。
しかし、中には相談したあとにケガや病気になったり、配偶者が死亡してしまうなどのイレギュラーで支払えなくなったりするケースはあります。
万が一返済が難しい場合は、きちんと弁護士に相談して再度話し合いの場を設けてもらいましょう。
相談の内容次第では、毎月の支払い額の減額といった対応策を示してくれることも考えられます。
絶対にやってはいけないのは「払えない状況を黙っておく」「何も言わずにいなくなる」ということです。
報酬を払えないことで辞任されてしまって、事件が解決しなくなります。
「報酬を払ってくれない人」というレッテルを貼られては、次に引き受けてくれる弁護士がいなくなる危険もあります。
弁護士費用の踏み倒しに潜むリスク
依頼を引き受けてもらえない
弁護士費用の支払いは、弁護士が依頼案件に取り組む前や取り組んでいる途中から支払う必要があります。
取り組んだ当初から滞納してしまうと、弁護士側から依頼を辞退されてしまい、仕事に着手してもらえないことが考えられます。
弁護士費用を完全に後回しにして、事件だけ先に解決してもらうことは絶対にできないことを覚えておきましょう。
滞納で訴えられる
弁護士事務所の対応次第では「後払い制度」を受けられることもあります。
もし後払い制度を利用したあとに踏み倒した場合、当然ながら弁護士側から訴えられると考えられます。
相手は法律のプロ中のプロです。
踏み倒してそのまま逃げられるわけがありません。滞納することには何一つメリットがありません。
どうしても払えない場合は法テラスに相談し、分割払いができる事務所を探すなどの方法を利用するほうが賢明です。
弁護士費用が払えないQ&A
生活保護受給者の弁護士費用はどうやって払えばいい?
生活保護の受給者の場合、法テラスを利用することで弁護士費用や裁判所に支払う予納金が免除になることがあります。
条件は自己破産の手続きを終了していても生活保護の状態にあることです。
一時的な生活保護では、免除されない可能性もあります。
主婦や無職の費用は同じ?
自己破産にかかる費用は、職業や収入で切り替わるわけではありません。
公務員でも会社員でも無職でも専業主婦でも、原則としてかかる費用は変わりません。
民事裁判に勝訴したら弁護士費用は敗訴側が払う?
弁護士費用でありがちな勘違いとして「裁判で負けたほうが支払う」というものがあります。
民事訴訟での弁護士費用の負担は、委任した人(依頼人)に支払う義務があります。
「訴訟費用は〇〇の負担」という判決が出ることはありますが、訴訟費用は印紙代程度の金額を表すことが一般的です。
実際にかかった弁護士費用は勝訴・敗訴にかかわらず、依頼した人が払います。
まとめ
今回は、弁護士費用が払えない場合の対応策と、もし払えないまま放置していた場合にどうなるかを解説しました。
払えないままにしておけば弁護士に辞退され、事件を解決することができません。そればかりか訴訟を起こされてしまうことも考えられます。
まずは、費用の支払いが難しいことを正直に相談しましょう。分割や後払いに切り替えるなどの対応をしてくれる可能性もあります。
それでも支払いが難しい場合は、「法テラス」などの無料相談を利用してみましょう。